2GB超えメディアへの ipk インストールの道 (3 桁機編)

1年越しのまさかまさかの続編です(^^;

いままでも発生していた問題ですが、3桁機用の SDHC ドライバによって、4桁機だけでなく、3桁機でもこの問題が無視できなくなりつつあるので、3桁機も同様の修正を入れてみました。 → ダウンロードページ

—-追記—-

説明不足でしたので追記しますと、標準のインストーラはパッケージをインストールする際に空き容量をチェックするのですが、SL-C3200を除く全機種で、空き容量が2GBを越えるメディアにインストールしようとすると「空き容量が足りません」といったメッセージが表示され、インストールできない問題がありました。当時は4GB以上のメディアが無かったためでしょう。

このパッケージは、この問題を解決するものです。

—————

また、4桁機で未対応だった SL-C3100用の修正も入っています。

これで SL-C750/760/860/1000/3000/3100 に対応したはずです。(SL-C3200は元々修正不要です)

私は SL-C760/1000/3000しか持っていませんので、これ以外については動作確認できていません。
例によってバイナリパッチで対応なので、未確認でリリースするのはちょっと危険なのですが、メディアの空き容量計算処理は全機種でほぼ同じだったのでたぶん大丈夫だとは思います。
とはいえ、リスクをご了承の上、自己責任でご使用ください。

SL-C750/760/860/3100 をお持ちの方は試してみた結果をご報告いただけるとありがたいです。

空き容量が2GB以上あるメディアに対して何らかのパッケージをインストールしてインストールが完了すれば修正されています。


2GB超えメディアへの ipk インストールの道 – その5

風邪をひいてしまって、ちょっと間が開いてしまいましたが、2GB越えメディアへのインストール対応の ipk パッケージを作成しました。→ダウンロードページ

今回は SL-C1000, 3000 のみで、SL-C3100 は対象外になってます。hekke様に調べていただいた所、SL-C3000 とはバイナリが違うためです。

原理的には同じ方法で修正できるはずなのですが、バイナリが手元にないことには解析できないのです。しかも、GPLではないのでバイナリをもらうわけにもいかず・・。
どうしようかなと思案中です。

とりあえず、SL-C1000, 3000 用を先に作成しましたので 4GB 以上の SD カード、CF をお持ちの方はお試しください。


2GB超えメディアへの ipk インストールの道 – その4

何だかんだでシリーズ第4弾 (^^;
結果を先に言うと、修正に成功しました!!

Haniwa様がコメントされていた SL-C3200 では2GB超えメディアへのインストールができる件は、SHARPのサイトに書いてありました。

SL-C3100 までは、4GB以上の CF では「メモリが足りません」と表示されてインストールできないと書かれていますが、SL-C3200では修正されているようですね。

それでは続きです。

コード置き場探し

原因も対処法もおおよそ目処がたったけど、まだ問題が1つだけ残っていた。それは修正コードを置く場所。

1命令で修正できればいいが、いろいろ考えてみたものの、今回の修正には数命令が必要そうだ。当然ながら普通にコンパイルされたコードには、わざわざ無駄なスペースなどない。

どこにコードを置こうか。どっかいいところないかな? 置けそうな場所は・・・

$ LANG=C arm-linux-readelf -l qinstall.so

Elf file type is DYN (Shared object file)
Entry point 0x1214c
There are 3 program headers, starting at offset 52

Program Headers:
Type Offset VirtAddr PhysAddr FileSiz MemSiz Flg Align
LOAD 0x000000 0x00000000 0x00000000 0x362c4 0x362c4 R E 0x8000
LOAD 0x0362c4 0x0003e2c4 0x0003e2c4 0x02e04 0x02e04 RW 0x8000
DYNAMIC 0x038ff8 0x00040ff8 0x00040ff8 0x000d0 0x000d0 RW 0x4

Section to Segment mapping:
Segment Sections...
00 .hash .dynsym .dynstr .gnu.version .gnu.version_r .rel.rodata .rel.data .rel.got .rel.plt .init .plt .text .fini .rodata
01 .data .ctors .dtors .got .dynamic
02 .dynamic

.text と同じセグメントにロードされるセクションである必要がある。そうでないと、アドレス解決しない限りロードされるアドレスが分からないので。

ELFについてそんなに詳しくないので分からないが、.gnu.version とかって要らないんじゃないのか?

と思って、おもむろに .gnu.version を strip したら動かなくなってしまった あっかんべー
必要なセクションだったのね。

うーん。他は必要そうなセクションばかりだな。。.hash, .dynsym, .dynstr, .init, .plt, .text, .fini と全然無駄がないじゃないか (当たり前だ ^^;)

ふと、.rodata が目に止まる。あれ? .rodata って .data とかと同じセグメントじゃないんだ。ReadOnlyだからか。

.rodata に無駄な文字列とかないかな・・・と思って .rodata セクションを見てみると・・・

$ LANG=C arm-linux-readelf -x 14 qinstall.so | less

Hex dump of section '.rodata':
0x00032f04 726f6c6f 43746573 00000072 6f6c6f63 color...setColor
0x00032f14 00000000 656e694c 6e616373 00000000 ....scanLine....
:
0x00032f84 6d6f682f 00000000 303d3d69 00296425 %d).i==0..../hom
0x00032f94 616d2d74 712f316e 2f797474 616d2f65 e/matty/n1/qt-ma
0x00032fa4 6e692f32 2e332e32 2d74712f 72657473 ster/qt-2.3.2/in
0x00032fb4 682e786f 62747369 6c712f65 64756c63 clude/qlistbox.h
0x00032fc4 0000002f 6e69622f 00007772 00000000 ....rw../bin/...

お! 程よく長くてデバッグ用とおぼしき文字列を発見。開発環境のファイル名だろうし、これは潰しても問題ないでしょう。

初めに \0 で終端したダミー文字列を用意しても、52Byteあるので 13 命令も置ける。これはいけそうだ。

修正コードの作成

修正コードは以下の掛け算を置き換える形で作成する。

   26e90:       e0050293        mul     r5, r3, r2

このコードを bl 0x?????? のコードに書き換え、コール先で r5 = r2 * r3 を計算する。その結果が 0x80000000 以上だったら 0x7fffffff を r5 に代入してリターンするようなコードを書けば、うまく修正ができそうだ。

ということで、 そんな感じのコードをインラインアセンブラで書いてちゃんと動くか確認。(確認用コード

実行してみると

res:7fff0000 rlong=7fff0000
res:7fff2000 rlong=7fff2000
res:7fff4000 rlong=7fff4000
res:7fff6000 rlong=7fff6000
res:7fff8000 rlong=7fff8000
res:7fffa000 rlong=7fffa000
res:7fffc000 rlong=7fffc000
res:7fffe000 rlong=7fffe000
res:7fffffff rlong=80000000
res:7fffffff rlong=80002000
res:7fffffff rlong=80004000
res:7fffffff rlong=80006000
res:7fffffff rlong=80008000
res:7fffffff rlong=8000a000
res:7fffffff rlong=8000c000
res:7fffffff rlong=fffffffe
res:7fffffff rlong=100000000
res:7fffffff rlong=100000002

OK。rlong が 0x80000000 以上の場合は 0x7fffffff が変数に格納できるようになった。4GB越えでも大丈夫。

この確認コードをベースに作った埋め込み用コードは以下の通り。あまりARMアセンブラに精通してないので、本当はもっと短く書けるかも。

    84ec:       e0805392        umull   r5, r0, r2, r3
84f0: e3500000 cmp r0, #0 ; 0x0
84f4: 159f5008 ldrne r5, [pc, #8] ; 8504
84f8: e3550000 cmp r5, #0 ; 0x0
84fc: 459f5000 ldrmi r5, [pc, #0] ; 8504
8500: e1a0f00e mov pc, lr
8504: 7fffffff swivc 0x00ffffff

mul 命令前後を読んで調べた結果、r0 が破壊可能なレジスタだったのでワーク用に使用した。

アドレスは適当だけどリロケータブルなコードなのでそのまま埋め込める。6命令+4Byteなので、前回見つけた領域にも余裕で収まる。

ということでバイナリエディタで上記コードを埋め込んでみた。

修正コード編集前
修正コード埋め込み前

修正コード変更後
修正コード埋め込み後

文字列の先頭はダミー文字列として "/ho" だけ残した。

その後は13ロングワード分が書き換え可能な領域なので、一度すべてFFで埋めた後、作成した修正コードをリトルエンディアンで埋め込んだ。 後で埋め込んだコードがわかりやすいように、先頭にFFFFFFFFを1つだけ入れておいた。

埋め込んだコードを objdump で逆アセンブルして確認。

$ LANG=C arm-linux-objdump -D --start-address=0x32f90 --stop-address=0x32fc0 qinstall.so

 00032f90 <.rodata+0x8c>:
32f90: 006f682f rsbeq r6, pc, pc, lsr #16
32f94: ffffffff swinv 0x00ffffff
32f98: e0805392 umull r5, r0, r2, r3
32f9c: e3500000 cmp r0, #0 ; 0x0
32fa0: 159f5008 ldrne r5, [pc, #8] ; 0x32fb0
32fa4: e3550000 cmp r5, #0 ; 0x0
32fa8: 459f5000 ldrmi r5, [pc, #0] ; 0x32fb0
32fac: e1a0f00e mov pc, lr
32fb0: 7fffffff swivc 0x00ffffff
32fb4: ffffffff swinv 0x00ffffff
32fb8: ffffffff swinv 0x00ffffff
32fbc: ffffffff swinv 0x00ffffff

埋め込み完了。思惑どおりのコードになった。あとは、mul命令の代わりにこのコードをコールするだけ。
コール先のアドレスは上記 objdump の結果から、0x32f98 を呼べばよい。

修正コードのコール

前に書いたように、以下の mul 命令を bl 命令に置き換えて修正コードをコールするようにする。

  26e90:       e0050293        mul     r5, r3, r2

bl は相対ジャンプ命令なので、オフセットを計算する。このページによると、この命令があるアドレス+8からジャンプ先までのオフセットを4で割った値を24bitオフセットとして指定するらしい。

ジャンプ先は 0x32f98 なので、オフセットは (0x32f98 – (0x26e90 + 8)) / 4 = 0x003040 となる。

無条件 bl は 0xeb?????? (??はオフセット) らしいので、0xeb003040 を 0x26e90 へ書き込めばいい。

バイナリエディタでコードを書き換えて objdump で確認すると・・・

修正前

   26e88:       e51b205c        ldr     r2, [fp, -#92]
26e8c: e51b3050 ldr r3, [fp, -#80]
26e90: e0050293 mul r5, r3, r2
26e94: e5942000 ldr r2, [r4]
26e98: e5923000 ldr r3, [r2]

修正後

   26e88:       e51b205c        ldr     r2, [fp, -#92]
   26e8c:       e51b3050        ldr     r3, [fp, -#80]
   26e90:       eb003040        bl      0x32f98
   26e94:       e5942000        ldr     r2, [r4]
   26e98:       e5923000        ldr     r3, [r2]

OK。mul 命令と bl 命令の置き換え完了。コール先アドレスも正しく 0x32f98 を指しててオフセット計算も合っていたようだ。

これで修正は終了・・・。

動作確認

/opt/QtPalmtop/binlib/qinstall.so を上記の修正を施した qinstall.so へ置き換えて、再起動。
祈りながら4GB SDにインストールしてみると・・・

インストールできた!

一発で動くとは思わなかったけど、ちゃんと動いてくれたようだ。
長かっただけに感動もひとしお。

これで何も気にせずに 4GB SDを使えるよ。うん。

あとは、これを ipk 化するだけだ。
ただ、qinstall.so は SHARP 製のプログラムなので自由に配布することはできないので、バイナリパッチと言う形で、ipk をインストールした時にパッチを当てるような実装にしないといけないかな。

SL-C1000 と SL-C3000 は持ってるから qinstall.so を入手できるけど、SL-C3100 は。。。SL-C3000と同じかなぁ?

どなたか、SL-C3100で qinstall.so の md5sum を取ってもらえませんか?

以下 SL-C3000 での実行結果

$ md5sum /opt/QtPalmtop/binlib/qinstall.so
cd2629a9cd451bcd3e5198f933bb0c33 /opt/QtPalmtop/binlib/qinstall.so

これと同じ MD5 だったら同じバイナリパッチが使えるんだけど・・・。

(次回いよいよ最終回?)