ドルコスト平均法ってどうなの?

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今までの技術系とは毛色が違う、お金の話です。ドルコスト平均法についてちょっとお勉強した結果をメモします。

私は投資についてはかじった程度の知識しかなく、若い頃に興味本位で株とFXをやって大損して以来、素人は投資では利益を出せないと思っていました。なのですが、マイナス金利のこのご時世で将来に向けてちょっとでもお金を増やすには、リスクなしで増やすことは不可能です。ということで真面目に投資について勉強しようと思いました。

これからは素人なりに勉強したことや気づいたこともブログに書いていこうと思います。

ということで、ドルコスト平均法です。単価が変動するもの(投資信託など)を定額で買い続けると、安いときには多く、高いときには少なく購入できるから、最終的には平均値よりも安く購入できるというもの。

しかし、テレビでも有名な山崎元さんは「ドルコスト平均法は気休め」とおっしゃっていますし、調べてみると賛否両論あることがわかりました。そこで、私も本当に安くなるのか、どの程度安くなるのか、気休めに過ぎないのかを自分で納得できるよう、調べてみました。

株価などのモデルとしてはランダムウォークを使ったりするようですが、簡単化のため、単価は下限\(a\)〜上限\(b\) の範囲の一様乱数と仮定します。実際は一様乱数であるわけがないんですが、傾向を理解するには十分かなと。

単価を \(x\)、その単価になる正規化した確率を \(p(x)\)とすると、こんな感じ。

$$
\begin{eqnarray}
p(x) =
\begin{cases}
\frac{1}{b-a} & (a \leq x \lt b) \\
0 & (上記以外)
\end{cases}
\end{eqnarray}
$$

購入口数は、正規化して毎回 1 円で買うと考えます。単価 \(x\) の場合、1円で買える口数は \(1/x\)。株価 \(x\) 円の購金口数の期待値は \(p(x)/x\) となります。購入口数は、これを \(x\) で積分すればよいので

\[
\begin{eqnarray}
購入口数 &=& \int_{ a }^{ b } \frac{p(x)}{x}dx \\
&=& \int_{ a }^{ b } \frac{1}{(b-a)x}dx \\
&=& \left[ \frac{1}{b-a}ln|x| + C \right]_a^b \\
&=& \frac{1}{b-a} \left( ln|b| – ln|a| \right) \\
&=& \frac{1}{b-a}ln \frac{b}{a} \\
\end{eqnarray}
\]

購入単価は口数の逆数なので

\[
\begin{eqnarray}
購入単価 &=& 購入口数^{-1} \\
&=& \frac{b-a}{ln(b/a)} \\
\end{eqnarray}
\]

となりました。
試しに値を入れてみると、例えば、1口 5000〜15000円(平均10000円)の間でランダムな値となる投資信託があったとして、毎回定額で買ったときの平均購入単価は、

$$ (15000-5000)/ln(15000/5000) = 9102.4円 $$

定口数で買っていた場合の平均値は、10000円なので、897円安く買えていることになります。割合で言うと、約9% 安いことに。

ちょっとレンジを変えて、1口 9000〜11000円(平均10000円)の間でランダムな値となる場合は

$$ (11000-9000)/ln(11000/9000) = 9966.6円 $$

こちらは 33.4 円 (0.3%)安いという結果に。これを見ると、振れ幅が大きいときにドルコスト平均法では効果が大きく、振れ幅が小さいときは効果が小さいことがわかります。

では、振れ幅によってどの程度効果が変わるのか調べてみます。\(a, b\) を正規化して、\(1 〜 (1+k)\) という振れ幅で考えてみます。この \(k\) は振れ幅 \((b-a)\) が下限値 \(a\) の何倍かを表しています。購入単価の式に \(a = 1, b = 1+k\) を導入します。

\[
\begin{eqnarray}
購入単価 &=& \frac{b-a}{ln(b/a)} \\
&=& k/ln(1+k)\\
\end{eqnarray}
\]

定口数で購入した場合、平均値は \( (1+1+k)/2 = 1+k/2 \) になるので、定額購入の効果(=定額購入/定口購入)は

\[
\begin{eqnarray}
&& \frac{k}{ln(1+k)} / \left(1 + \frac{k}{2}\right) \\
&=& \frac{2k}{(2 + k)ln(1+k)} \\
\end{eqnarray}
\]

これを \(k\) についてグラフにすると、以下のようになりました。

k=10 のケースのように、単価が 10000〜110000(11倍) の間で一様乱数となる場合は、定口購入に比べて約3割安く購入できます。しかし、k=0.1のように、10000〜11000(1.1倍) の範囲しか値動きがない場合は、ドルコスト平均法でもあまり変わらないようです。

今回はモデルを一様分布としたので、より現実に近いランダムウォーク時の分布(正規分布)とは異なりますが、特性の傾向を理解するにはいい勉強になりました。

今回の検証で個人的に得られた気づきは、定口購入より安く買えるのは間違いないのですが、思っていたよりはドルコスト平均法で買っても安くならないということでした。

もう1つは、積立購入の重要性です。投資のプロでも先を読むのは難しいと言われている値動きですが、積立して購入回数を増やすことで素人でも平均値近くで購入できるということです。考えてみれば当たり前なのですが、今回の検証で腹落ちしました。

一般に、現在の値が高値を掴んでしまったのか、安値で買えたのかは将来になってみないとわかりません。特に素人ではなおさらです。結果的に高値であれば、損をする確率は高まりますし、安値で買えていれば、得をする確率が高くなります。しかし、大体の平均値で買うことができれば、値上がりする確率も、値下がりする確率もだいたい半々にでき、リスクを下げることができます。しかも、現在の値段や、売買タイミングなどを一切知らなくても、素人でも平均値近くで買えるというのはスゴイ事だと思います。

ドルコスト平均法の調査からはちょっと逸れてしまいますが、株/FXで損をした経験のある私の印象としては、ドルコスト平均法でも、定口購入でも、買い方はどうであれ、積立のように「時間を分散して買う」ということは、素人でも誰でも「平均値近くで買う」ことができる方法なんだと分かったのが、一番の収穫でした。

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